各種ワクチンについてのご紹介です。

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ロタウィルス(RV)ワクチン

 ロタウィルスと言うのは、胃腸炎を起こすウィルスです。

ロタウィルスに感染すると、約2日の潜伏期を経て、主に乳幼児に4~5日続く強い嘔吐・下痢症状をもたらします。「下痢便の色が白くなる」事がよく知られています。この他、発熱も多く見られます(30~50%)。

この下痢がとても激しくて、容易に脱水になります。

ロタウィルス感染は冬に多い、そして乳幼児に多い

胃腸炎が秋冬に多いのはよく知られています。しかしその原因になる病原体は多く、細かく見ると時期により“流行りの”病原体は異なってきます。

ウィルス性胃腸炎の季節分布

上のグラフは、日本でのウィルス性胃腸炎の原因ウィルス分布を月毎に見たものです。青がロタウィルスです。このように、大雑把に言って胃腸炎の原因として多いのは、夏は細菌性、秋~年末はノロ、2月~春先はロタウィルスとなってます。

乳幼児の胃腸炎はロタウィルスが多い

胃腸炎の原因ウィルスとして、世間的に最も有名かつ頻度も高いのはノロウィルスでしょう。しかし、5歳未満の乳幼児に限って言えば、胃腸炎の原因として最も多いのはロタウィルスです(上グラフ参照)。

ロタウィルスはとてもありふれたウィルスなので、感染頻度も高く、5歳までに95%の児が少なくとも1回は感染すると言われています。しかしロタウィルスには多種の型があり、1回の感染でできるのはその「かかった型」に対する免疫だけなので、その後も何回かロタウィルス感染を繰り返す事になります。

ロタウィルス感染症は重症になりやすい

また、乳幼児においてロタウィルスは、胃腸炎の中で最も多いだけでなく、最も重症になりやすい事で知られています。日本の場合で約10%が重症になります。

重症化のキモは何と言っても脱水です。あまりに激しい水様下痢が何回も続き、しかもそこに嘔吐が伴う訳ですから、ちぃっちゃな子供なんかあっと言う間に脱水になります。

脱水にならないためには水分補給が肝要ですが、ゲロピー状態の児に水飲ますのがどんなに困難かは子育てしてる人なら誰でも知ってると思います。しかもその補給に失敗すると容易に緊急入院を要する状態になるわけです。統計によれば、日本での5歳未満児のロタウィルスによる発症者は年間120万人、それで病院かかる人が79万人、入院者は24,000~78,000人と見積もられています。

ロタウィルスが起こすのは下痢だけではない

ロタウィルスは下痢だけでなく、脳炎や脳症を起こす事でも知られています。だがその詳しい機序はまだわかっていません。下痢や脱水の程度と脳症の発生頻度・重症度には相関がなく、要するに「下痢が大したことなくても、起きる児には脳炎が起きる」のです。これも脱水と同様展開が速く、朝元気だった児が夜いきなり意識不明になってたりします。

症状としては繰り返す痙攣や意識障害であり、38%が後遺症として麻痺等を残します。

小児脳炎の原因菌

上図は小児の急性脳炎/脳症の原因分類ですが、ロタウィルスは第3位で結構な位置を占めています。具体的な数で言えば毎年日本で約40人です。

ちなみに図の“HHV-6,7”とは突発性発疹のウィルスです。それにしてもやっぱ脳炎と言えばインフルエンザですね。コレ見てまだワクチンやらない人、いや「ワクチン危険!」て騒ぐ人って、どう見てもxxx(以下自粛)

ロタウィルスは感染力も強い

ロタウィルスはノロウィルス同様、極めて感染力が強い事でも知られています。どの位強いかって言うと0.01mlの下痢便が手についてる人が作ったメシを食うと1万人が感染する、という位。

だから勿論手をよく洗うとかは大事なのですが、ロタウィルスは患者の吐物や下痢便中に大量に出てきますので、どんなに手洗っても衛生環境を整えても、保育園とかで誰か1人にゲロ吐かれたらあっという間に流行しちゃうわけです。それを完全に防ぐ事は難しい。

つまり、「身の回りにロタウィルスが居る」という状況はどうにも消しがたいわけです。胃腸炎、流行るわけですね。

これは日本の話じゃないけど

ロタウィルスでは「容易に入院を要する状態になる」と書きましたが、本当はここに「死に至る状態」と書くべきところなのです。事実、(主に発展途上国では)多くの乳幼児がロタウィルス感染により死亡してます。ロタウィルスによる5歳未満児の死亡例を集計すると、上位11ヶ国だけでで年間345,000人となり、これは世界の総死亡の65%以上を占めるのです。

日本では「ロタウィルスで死ぬ」という話はほとんど聞かない(統計的推論では10人以下~20人/年)ですが、これは第一に多くの先人が社会の衛生に偉大な投資をしてきたから、第二に全国の小児科医療関係者が献身的な仕事をしてきたからに他なりません。別に日本のロタウィルスが世界に比し特に大人しい訳ではないのです。

治療法はないので予防が大事

そしてロタウィルス胃腸炎に対しては基本的に「治療法はありません」。ウィルス感染なので現在の人間にできる事は体力勝負のみです。かかった場合に重症化するかしないかは、その子の運に過ぎません。日本にいてもアフリカにいてもそれは同じ。だから、ワクチンによる防御が肝要なのです。

ロタウィルスワクチンとはどんなワクチンか?

2013.1月現在、2種(GSK社製“ロタリックス”と、MSD社製“ロタテック”)あります。

“ロタリックス”は最も頻度の高いロタウィルスであるG1P[8]型にのみ対応した1価ワクチンですが、交叉免疫性が強く、他型に対しても免役を作ります。具体的にはG2P[4],G3P[8] G4P[8],G9P[8]型にも効きます。つまり多価ワクチンと同じ効果があるわけです。

“ロタテック”は、G1,G2,G3,G4,P[4]の5つの成分を含んでいて(「5価ワクチン」と呼ぶ)、頻度的に上位4種であるG1P[8], G2P[4], G3P[8], G4P[8]の全てを抑えます。

肝心の臨床効果ですが、“ロタリックス”も“ロタテック”も、ぶっちゃけ大きく違いません。

“ロタリックス”にしろ“ロタテック”にしろ、複数回接種の経口生ワクチンです。つまり腸管に対しわざとロタウィルスを感染させ、それにより免疫を誘導する仕組みです。

ロタウィルスワクチンの効果は?

ま、まず↓のグラフを見てください。

ロタワクチンによる胃腸炎減少効果

これはアメリカにおけるロタウィルス流行の年次推移を表したグラフです。

縦軸は胃腸炎患者の病原菌を調べた際、ロタウィルス陽性と判定された人の率を表します。つまりグラフが上に行くほどロタウィルス患者(率)が多かったという事。横軸は年の第何週かを表します。1が正月、52で大晦日ということ。図は1月1日始まりではなく、横軸の真ん中辺に正月を置いて冬が切れ目なく観察できるように書いてあるわけ。

で、グラフ右上の方の  !!━━(゚∀゚)━━!!  みたいな横棒はグラフが山になるところ、即ち流行期間の長さを示します。“Onset”は流行開始、“Peak activity”は最高潮、“Offset”は流行終了。アメリカも日本同様、ロタウィルスの流行は毎年年末から始まり第12~15週(2月末~3月)に多い事がわかると思います。ここまでOK?

で、図の青点線グラフは2000年~2006年のロタウィルス患者率の中央値(ま、平均みたいなもん)です。この7年間、年により多少は流行規模の大小があるものの、いずれの年も青点線の前後、青い網掛け帯の中に毎年入ってた、という事が示されています。つまりそれまでロタウィルスにかかる患者数はほぼ不動でした。

ところが2007年末~2008年春のシーズン(黒点線)はいきなりこの青帯からはずれ、ロタウィルス患者率がガタ減りしています。更に右上の棒を見れば、2007年以降は流行期間が短くなり、ピークも遅れる傾向がある事がわかります。

2006年と2007年の間に何があったのか?  答は簡単。アメリカでのロタウィルスワクチン導入が2006年だったのです。

2012.1月現在では世界120ヶ国以上でロタウィルスワクチンが導入されており、そのデータによるとロタウィルスワクチンは、

  • ロタウィルス胃腸炎総数を68~79%減らし、
  • 重症例を90%~98%減らし、
  • 入院を96%減らす

事がわかっています。

標準的な接種時期

 “ロタリックス” の場合、2回接種となります。ただしその接種時期には制限があります。

  • 1回目は生後6週以降、20週までに
  • 2回目は生後10週以降、24週までに

 “ロタテック” の場合、3回接種となります。ただしこれも接種時期に制限があります。

  • 1回目は生後6週以降、24週までに
  • 2回目は生後10週以降、28週までに
  • 3回目は生後14週以降、32週までに

この「までに」という制限は厳守されます。例えばカゼ引いて接種が延期された場合も、急用ができて明日にしますという場合も、それで規定を過ぎたら接種できなくなります。また、「までに」というのは「+1日未満」という意味です。例えば「20週までに」とは「生後140日まで」で、141日はダメです。御注意下さい。

またロタワクチンは生ワクチンなので、これを接種するとその後4週間、他のワクチンが接種できなくなります。この時期は他にも接種すべきワクチンが集中していますので、他のワクチンの最適な時期を邪魔しないように、

ロタワクチンを接種するなら、他ワクチンとの同時接種は必要条件にして前提

とお考え下さい。

これを考慮すると実際には、Hibや小児用肺炎球菌ワクチンと同時接種するのがオススメです。具体的には

  • 1回目は2ヶ月齢に、Hibや小児用肺炎球菌ワクチン・B型肝炎ワクチンと一緒に。
  • 2回目は3ヶ月齢に、Hibや小児用肺炎球菌ワクチン・DPT・B型肝炎ワクチンと一緒に
  • 3回目(ロタテック)は4ヶ月齢に、2回目と同様に

が良いでしょう。

現状での問題点

  • 任意接種なので自費であり、親にカネ出す気がないとその子は接種されない。
  • しかもかなり高価。これではなかなか普及しないでしょう。
  • 既述のごとく他ワクチンとの同時接種は「必要条件」なのですが、日本ではマスコミとかクズ共が根拠なく騒ぐせいで、同時接種がなかなか受け入れられない。
  • 生ワクチンなので、投与後暫くは生きたロタウィルスが便中に出てくる可能性がある。期間は1週間。この排泄されたロタウィルスに触れても感染する可能性は低いが、この間はおむつ触ったら手洗えとか、そういう注意は必要。
  • 腸重積の既往がある、あるいはそれを起こしそうな先天異常がある子は、接種できません。