各種ワクチンについてのご紹介です。

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少しずつ作っていきます。

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おたふくかぜ(ムンプス)ワクチン

「おたふくかぜ」は、ムンプスウィルスに感染すると起こる病気です。「流行性耳下腺炎」または「ムンプス」とも呼ばれます。主として飛沫感染によって広がりますが、患者との直接接触や、唾液を介した接触(要するに間接キスね)でも感染します。潜伏期は約2~3週間前後ですが、発症6日前ぐらいからウィルス排出があるので、自分でも気づかないうちに周囲に感染を広げている事があります。

症状は何と言っても1週間程度続く耳下腺の腫脹(とそれに伴う高熱)ですが、「やられる」のは耳下腺ばかりではありません。ムンプスウィルスは全身のいろいろな所、特に神経組織や内分泌系腺組織に広がります。これにより様々な合併症(髄膜炎・脳炎,難聴,膵炎,精巣炎・卵巣炎 等)を起こしてきます。

おたふくかぜの合併症

合併症発生率は意外に高く、下表の如くなっています。

合併症 発生率
髄膜炎 1~10%
脳炎 0.3~0.02%
難聴 0.01~0.5%
精巣炎 20~40%
卵巣炎 5%

おたふくは流行する病気ですから、流行の規模によって患者数が変わりますが、近年の報告では日本で年間43~144万人の患者が出ているとされています。間を取って平均100万人とすると、日本では毎年5000人の子がおたふくのせいで難聴になっている(発生率0.5%として)事になります。

おたふくかぜは発症すると治療法がありません。人類はまだムンプスウィルスを退治できる薬を持っていないからです。かかったら「早く治りますように」とお祈りするしかありません。合併症が出るかどうかも“運次第”で、出たとしても同じく治療はできず、“治ってくれる”までただ時を待つのみです。モノによってはそもそも起きたら最後、治らない場合もあります。例えばムンプス難聴は聴覚神経の死滅によって起こるので、もし起きてしまったら治癒はほぼ見込めません。つまり一生そのままです。

だから防備のためにワクチンがあるのです。なのに日本では任意接種(=自治体から案内が来ず、しかも有料な接種)になっており、出鱈目を言いふらす馬鹿も後を絶たないために接種率が低く、地域にもよりますが30%前後の子供しか接種されていません。しかもその多くは1回だけの接種です。

外国のおたふくワクチン事情

では外国ではどうなのかを見てみましょう。まずはアメリカの状況、おたふくかぜの年間患者数(全米合計)の推移です。

アメリカのおたふく流行状況

アメリカでは1967 年からワクチンの使用が始まり、1977年からは1歳以上の幼児を対象に定期接種(=全児を対象とした無料接種 )に組み入れられました(この時は1回接種)。これによりほぼ全ての子供が接種を受け、おたふくかぜの患者数は激減しましたが、1986年~87年に起きた流行が問題視され、1989年からワクチンの2回接種が実施されるようになりました。今ではおたふくは全米で年間300例以下しか発生せず、ほぼ絶滅状態です。アメリカは日本のざっと2倍人口がありますから、日本が同様に予防接種をすれば年間150人以下しか患者が発生しない事になります。

だが実際には、日本ではおたふくの予防接種があまり行われないために、年間100万人が感染し、5000人の子供が一生治らない難聴になっているのです。毎年毎年ですよ。

私はここでも繰り返します。ワクチン嫌いな人が騒ぐのは勝手です。どうぞお好きなように自分ちの子供は難聴にでも不妊にでもさせといてください。だが他の子供を巻き込むのはやめてくれ

おたふくワクチンの接種回数

実は既に2回接種を導入済のアメリカでも、2006年にアイオワ州を中心に6000人程度の流行がありました。通常は全米で年間300人以下ですから、これはアメリカでは大流行と言えます。これが問題視されたため、一部の州ではワクチンの3回目接種が行われ、結果、この流行も終息に向かいました。現在アメリカ政府は3回目接種の対象をどこまで広げるべきか検討しています。

ここでもう一度繰り返します。日本ではワクチンを1回もやらない人が70%で、毎年100万人がおたふくにかかり、5000人が難聴になります。だがそれを問題にするどころか、今日も「ワクチンは危険!」とカスゴミ マスコミが言いふらし続け、多くの人がそれを信じています。一方、アメリカでは既に2回接種が常識で、ある1年に6000人の患者(難聴になった人じゃなくて、単に“かかった人”の数ですよ)が出た事を問題視して3回目の接種を検討しています。

何でしょうコレ。これ同じ21世紀の、一応先進国と言われる国同士の比較なんですよ。

これはアメリカのような、カネのある超大国だけが特別進んでいるでしょうか。

世界のムンプスワクチン定期接種状況

上図の黄色い所は、2009年時点でおたふくかぜワクチンを定期接種(=公費で全ての子供に接種)としている国です。灰色はそうでない国です。日本人が心のどこかで「後進国」呼ばわりしてる国々も見事に黄色いですよね。そして我が日本は...もちろん、北朝鮮やアフリカ諸国と同じ灰色ですネ!

では接種回数は、というと、2009年時点での世界の情勢は以下のようになっています。(上図と共に出典はWHOデータ;pdf注意)

地域 所属国数 1回接種 2回接種 定期接種国数 定期接種比率 2回接種比率
南北アメリカ 35 4 31 35 100% 89%
ヨーロッパ 53 1 52 53 100% 98%
東地中海 21 1 12 13 57% 92%
東南アジア 11 2 0 2 20% 0%
西太平洋 27 3 10 13 19% 77%
アフリカ 46 0 2 2 4% 100%
合計 193 11 107 118 61% 91%

この表で

  • 「定期接種比率」・・その地域の何%の国がおたふくワクチンを定期接種としているか
  • 「2回接種比率」・・定期接種している国の内、2回接種としているのが何%か

をそれぞれ表しています。世界全体では61%の国で定期接種(全児童に接種する)として行われ、その91%が2回接種を採用している訳です。ま、「2回が世界の常識」つっていいんじゃないでしょうか。だが70%の人が「0回」な日本では、2回接種する人は...ほとんどいません。もはやおたふくかぜが流行するのは、日本の他はエジプト・リビア以外のアフリカ諸国と、東~東南アジアの一部国だけになりました。

標準的な接種時期

昔はおたふくかぜの流行は、初めて集団生活に入る入園・入学後の春に多い、とされていました。しかし現在は大分情勢が異なります。

おたふくかぜ患者年齢分布

この↑図はおたふくかぜ患者の年齢別分布を表したもので、国立感染症研究所のデータを基にしています。0歳児は少なく、年齢と共に増え、4~5歳が最も多くなり、その後は減少します。3~6 歳合計で全患者数の約60%を占めます。これを防備するためには、

  • 1歳で1回目を済ます
  • 4~5歳程度で2回目

の、2回接種がよい事になります。

現状での問題点

  • 日本では任意接種なので自費であり、親にカネ出す気がないとその子は接種されない。
  • 昔からあるワクチンなのでHib小児用肺炎球菌ワクチンよりは認知度が高いが、それでも絶望的なほど接種率が低い。2回接種なんて夢のまた夢...
  • 我が子にちゃんと接種させる30%の親の間でさえ、「2回接種が世界の常識」なんて、ほとんど知られていない。つうか、知らされていない。
  • 日本だって、20年前までは定期接種でコレやってたんです。それがダメになったのは例によって以下略。

水痘(水ぼうそう)ワクチン

日本人は水痘(水ぼうそう)は、おたふくと同様、「はやって当たり前」と思っていますが、世界の常識はこれと全く異なります。世界の普通の国では、水痘は日本のようにははやりません。この差は例によって、日本ではワクチンをちゃんとやってない事によるものです。

水痘(水ぼうそう)とは?

水痘は、ヘルペスウィルスの一種である水痘帯状疱疹ウィルス(Varicella-Zoster Virus;略してVZV)の感染によって起こります。VZVは大変感染力が強く、空気・飛沫・接触いずれの経路でも感染し、インフルエンザの3倍の勢いで周囲へ広がります。また、水痘は不顕性感染(水疱等の症状が出ないこと)が少なく、感染するとほぼ確実に発症します。実際、水痘ワクチン未接種者が水痘患者に接触すると、ほぼ全員(90%以上)が感染し、発症する事が知られています。

VZVに感染すると2週間程度の潜伏期を経て、通常(70%)結構な高熱が先発し、そこから1~2日後に全身に紅斑が出現します。紅斑は次第に水疱(透明汁)になり、やがて膿疱(濁汁)になり、最終的に痂皮化(カサブタになる事)します。皮疹は全身で計300ヶくらいが普通ですが、全部一斉に出るわけではないので、特に前半期はこの各種段階の皮疹が混在します。こんな感じ(←患者画像が大量表示されます。こういうのダメな人は注意)

最初の水疱ができてから全て痂皮化するまでが通常7~10日間。この間は学校等への出席が法律で禁じられています。痂皮はいずれ脱落しますが、その後は必ず瘢痕となります。つまりアトが残ります。

ついでに、水痘患者は自分がそうだと気付く(水疱が出る)2日位前から、周囲にVZVをまき散らしています。お兄ちゃんが幼稚園でうつされて水痘発症した時には、実はとっくに弟に感染させている、という訳です。弟がワクチンしてなければ、ね。

水痘の合併症

水痘は多くの場合(瘢痕が残ることや後述の帯状疱疹を除けば)良好に経過しますが、中には様々な合併症を起こして重症化する例もあります。ワクチン未接種で水痘に感染した場合、400人に1人は入院を要する重症になります。

合併症として最多の物は肺炎,溶連菌感染など、VZV以外の細菌の同時感染ですが、やはり何と言っても怖いのは髄膜炎や脳炎,脊髄炎,小脳失調などの、神経系の合併症です。これらは中枢神経にVZVが侵入して起こる問題で、80%の人は治りますが、20%は重篤な後遺症を残すか、または死亡します。

ただし広範な脳炎はまれで、水痘患者1万人に3人程度です。少ないように見える、でしょ? ではちょっと計算してみましょう。

日本の水痘患者は年間100万人と推定(pdf注意)されています。1万人に3人の割合とすると、年に300人が水痘により酷い脳炎を起こしている事になります。貴方が、あるいは貴方のお子さんがこの300人の一人にならないとは、誰も約束してくれません。

おたふくみたいにアメリカと比較してみましょう。2010年の統計で、アメリカの水痘患者は人口10万人あたり9人弱です。この比率をそのまま日本の人口に当てはめると、水痘患者は年間9000人程度となり、重症な脳炎は年間2~3人、という計算になります。

もう一度言います。日本がアメリカと同じ事をしていれば、水痘に罹る年間100万人は年間9000人に減り、水痘のせいで脳味噌が大ピンチになる児は1年に2~3人しか出なくなるはずなのです。しかし実際には1年に300人の児が脳味噌やられ続けています。日本とアメリカは何が違うというのでしょう。日本は何をしてないから子供の脳が危険に晒され続けるのでしょう。答は簡単。ワクチン接種です。

水痘ワクチンの効果

水痘ワクチンは1回接種すると水痘に80%罹りにくくなり、もしかかっても水疱の発生数が激減し(時には全く見られなくなる → “罹った”事にすら気がつかない)、つらい時間も短縮され、発熱等の合併症も出にくくなる事が証明されています。2回接種すると更に効果的です。このようなワクチンをみんなが接種すれば、VZVも繁殖するべき場所(人体)を失い、VZVに罹る患者はますます減っていく事になります。実例を見てみましょう。

アメリカでの水痘ワクチンの効果

上のグラフはアメリカにおける水痘ワクチンの接種率と、水痘患者数の推移を描いたものです(みずぼうそう.jpより無断でパクリ)。年を追いながら見ていくと、

  • アメリカでも、水痘ワクチンをやってなかった頃(~1996)は水痘患者数が多かった
    (余談:実は珍しくアメリカでの水痘ワクチン導入は世界に比し遅かったのです。それでも日本よりは18年も早いけど。)
  • だが、ワクチン開始(この時は1回接種)と共に患者数は激減した
  • 2003~2006年にかけ、患者数がやや増えてしまったが、2回接種にしたら再度減った

このような経緯により、今では水痘ワクチンは2回接種が世界標準なのですが、これによって水痘に罹る危険は大いに減らせるわけです。アメリカでは2011年現在できちんと2回接種してる児が90%以上います。一方、同時期の日本は1回しかやってない児を入れても20%です。 これが子供たちの健康を守れているか、守れていないかの差になって表れているのです。もひとつ見てみましょう。

アメリカでの水痘ワクチンの効果

これはまたしてもアメリカにおける、水痘による死亡者数の推移を年齢帯別に示したグラフです。縦の紫点線は水痘ワクチンの導入時(1995年)を示します。話が長くなるので細かいとこは省きますが、ワクチンの導入によって大きく死亡者が減っていることがわかると思います。

これらの客観的事実を見たら...ワクチンやんない手はないですね

ま、本サイトではあちこちで指摘していますが、こういう事実を見ることなく、現代科学を否定したい人たちは勝手にしてもらって結構です。他人さえ巻き込まなければね。マスコミ? あぁ、あんなの? まだ見てるんですか?

2回目の接種をいつやるか

というわけで水痘ワクチンは2回接種が世界標準です。で、それをいつやるか、ですが、乳児期の感染を避けるため、1回目は1歳なりたて頃。これは大体どこの国でも変わりません。

問題は2回目です。

残念ながらワクチンといえども万能ではなく、どんなワクチンも「接種したのにかかってしまった」という事が起こりえます。これをvaccine breakthroughとかvaccine failureと呼びます。その率は水痘の場合で10~20%位。これには2種があります。

  • Primary Vaccine Failure (略してPVF)··········· 接種したけど1回じゃちゃんと免疫がつかなかった → 感染
  • Secondary Vaccine Failure (略してSVF)········ 接種して免疫ついたけどその後免疫弱っちゃった → 感染

いずれも避けたい事態ですが、それには2回目の接種が有効です。たとえば前項の「アメリカで2003~2006年にかけ、水痘患者がやや増えた」のはSVFによるものですが、これに対抗するためにアメリカは2回目の接種を導入して鎮静化に成功したわけです。

PVFな児にしっかり免疫を付けてあげるには、1回目接種後わりと早く(半年くらい)2回目をやらないといけません。またSVFに対しては1回目の免疫が落ちてくる頃を狙って(3~5年後くらい)接種するのがよい、となります。

PVFもSVFもカバーするには2度3度と繰返し接種すればよい訳ですが、予算の都合もあり、そう何度もってわけにはいきません。どちらかをより重視する事になりますが、その辺の事情は国によって判断が異なります。水痘のはやり具合等が各国で異なるからです。ちなみにドイツやスイスはPVF重視派,アメリカはSVF重視派です。

日本は従来はSVF重視派で、「2回目は幼稚園年長あたりで」と言っていたのですが、近年の流行状況などを鑑み、2012年4月からPVF重視派に転じました。つまり「2回目は1回目から半年後」という事にしたのです。2012年3月までに水痘ワクチンを接種した方は「5年後くらい」というご案内をされてると思いますが、それはこういう事情によるものです。2014年10月現在では、接種スケジュールは以下のようになります。

標準的な接種時期

  • 1歳なりたてで1回目。これはMRおたふくと同じタイミングです。
  • その半年後(最低3ヶ月,最長12ヶ月)に2回目。

現状での問題点

  • 日本では任意接種なので自費であり、親にカネ出す気がないとその子は接種されない。
  • 日本人が日本の子供たちの為にと開発したワクチンなのに、日本ではほとんど使われていない。1回しかやってない人を入れても接種率20%位。
  • という事だったのですが、2014/10/01からようやっと公費接種になりました。これでまだやんない奴とかもうシラネ。ただし対象は1~2歳のみです。
  • 一応、3~4歳児にはある程度のレスキューがあり、全くの未接種者は1回だけ公費接種できます。ただし本来2回した方が間違いなくいいわけだし、2015/03/31までしかコレできません。なんかイマイチ。
  • 5歳以上の児はシカトされました。自費になりますが、未接種者は是非接種を考慮すべきと思います。

おまけ:帯状疱疹について

“帯状疱疹”という病名は多くの人が聞いたことがあると思います。主として顔や胴体の左右どっちか半分に、一列に並んだ発疹こんなの;←患者画像が大量表示されます。こういうのダメな人は注意)が出る病気です。この発疹はやがて水胞となり、最後に痂皮化して終了します。つまり水痘と同じ経過をたどります。

実は水痘の病原体(VZV)は、水痘が治っても体から消失しません。人間の神経に潜入し、そこで一種の休眠状態に入るだけです。普段は何もしませんが、その人が弱ると活動を再開し、潜入していた神経に沿って皮膚に出てきて、発疹を形成します。水痘と同じ病原体なので、水痘と同じような水疱になるわけです。つまり帯状疱疹とは、いわば水痘の再発という現象なのです。その人が弱ると出てくるわけなので、主に大人、特に高齢者になってから出てくる事が多いです。

やっかいなのは、帯状疱疹後の神経痛です。帯状疱疹はいわば神経を舞台にVZVが暴れる出来事ですから、多くの場合に神経痛を伴います。そしてこの神経痛は後遺症として残り易く、しばしば治療が困難です。数年単位で灼熱痛がずっと残ることもあります。

水痘ワクチンは帯状疱疹を防げるでしょうか? この疑問には2つの側面があります。

1つは、【小児期に水痘ワクチンを接種しておくと、高齢になった時に帯状疱疹が出にくくなるか?】です。この答えは、“理論的にはイエス”です。帯状疱疹は水痘の病原体(VZV)が神経にたどり着いて潜入するからおこる病気です。が、水痘ワクチン被接種者はVZVが外界から体内に侵入した時点で迎撃し、神経まで届かせにくくなるので、将来帯状疱疹を起こす危険を減らせるだろう、と考えられます。ただし、これを実地で検証するには、実際に小児期に水痘ワクチンを接種した人が高齢にならないといけません。水痘ワクチンの登場は早い国でも1985年前後ですから、2014年現在、この仮説を検証できるのはあと30年くらい後でしょう。

2つめの側面は、【水痘にかかった事のある高齢者に水痘ワクチンを接種すると、その後は帯状疱疹が出にくくなるか?】です。これには実地の答があります。

水痘ワクチン接種すると帯状疱疹が減る

上のグラフはアメリカで行われた研究で、60歳以上の人を 《水痘ワクチン(ただし改造版)を接種した人》《しない人》に分け、両群でその後5年間(途中から参加する人もいるので“平均的”には3.12年)にわたり帯状疱疹について差があるかを検討したグラフです。

左のB.というグラフは「帯状疱疹にかかった人の数」を比較したものです。青線がワクチン接種者,赤点線が非接種者です。一目瞭然で、ワクチン接種者は帯状疱疹発生率が非接種者の48.7%、つまり約半分になります。

右のA.というグラフは「帯状疱疹にかかった人の内、その後遺症として神経痛を残してしまった人の数」を比較したものです。青線赤点線の意味はB.と同じです。これも一目瞭然で、ワクチン接種者は神経痛後遺症が非接種者の33.5%、つまり3分の1になります。

これをまとめると、高齢者が水痘ワクチンを接種すると、「帯状疱疹に罹ってその後神経痛で悩む事」が、半分×3分の1 = 6分の1 になる、という事になります。これを基に、アメリカでは60歳以上(その後の追検証を経て2014年現在では「50歳以上」に拡大)の人に水痘ワクチン(改造版)の接種が推奨される事になりました。ただしこの研究で使われた水痘ワクチン(改造版)は、現在日本で一般に使われるワクチンと成分はほぼ一緒ですが、何倍か濃ゆい物となっていますので、日本の物をそのまま使って同じ成果が出るかどうかは未知数です。あと、公的には認可通っていません。(2016/04/10追記) 2016.3月付けで、50歳以上を対象に日本でも認可通りました! ただしワクチンは品薄な上、小児優先のため、大人用には入手できない場合があります。ご了承ください。